Special Columnスペシャル コラム

角力灘の海や夕陽を望む場所に建てられた遠藤周作文学館。ここには、遠藤先生のご遺族より寄贈・寄託された数多くの蔵書や生原稿が収蔵、展示されています。今回は、彼が愛した文学館からの風景について紹介します。

「神様がぼくのために…」
遠藤周作が愛した海と夕焼け

文学館から望むことのできる、広く美しい海。遠藤先生は、この息を吞むような景色を観て「神様がぼくのためにとっておいてくれた場所だ」と語られたそうです。夕陽の名所として多くの人々に親しまれ、カメラやツーリングを楽しむ人で賑わう人気スポットですが、絶景という言葉さえ霞んでしまいそうな自然美を感じることができます。角力灘の深い青と、澄んだ空の青。水平線に沈んでいく太陽と、茜色に染まっていく空。毎日のように表情を変え、暮らし慣れた地元の人たちでさえ立ち止まってしまうような景色が、訪れる人たちに何か語りかけているようです。

咲き誇るコスモスと、
想いを巡らせる神秘的な空間

「ぼくが死んだら、時々墓参りに来てくれよな。コスモスの花束でも持って」と言ったほどに遠藤先生が愛していたコスモスは、秋になると文学館のテラスから海側の斜面に向かって咲き乱れます。コスモスが織りなすピンクのグラデーション越しに望む角力灘の秋は、遠藤先生の想いを何倍にも感じられるベストシーズン。毎日の暮らしに追われ、ちょっとだけ軸足を人生に向けたいという方は「思索空間アンシャンテ」にぜひ。フランス語で「はじめまして」を意味するこの場所は、遠藤先生が愛した風景を眺めながら、文学や人生に想いを巡らせる空間です。物思いに耽ったあとの帰り道は、満天の星空が見送ってくれることでしょう。

外海のまちで息づく、
キリシタンと遠藤文学の旅へ

遠藤周作文学館を楽しんだら、隣接する道の駅「夕陽が丘そとめ」に足を運んでみましょう。ここでは、地域の特産品や工芸品、農林水産物が販売されているほか、レストランでは地産地消の田舎料理を味わうことができます。また、文学館周辺には「外海の出津集落」があり、現在は出津文化村として整備されています。世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に含まれるこの集落には、出津教会堂やド・ロ神父記念館など、キリスト教の文化を伝える施設がずらり。禁教をテーマに物語を紡いできた遠藤先生の足跡を辿れる場所です。絶景を望む文学館で遠藤先生の言葉に触れ、作品にゆかりのある地をめぐる旅へ。ぜひお越しください。