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2023.11.21Talk Show

【イベントレポート】窪塚洋介さんトークショー&「沈黙」上映会

代表作『沈黙』をテーマに開催されたトークショー&上映会

9月16日(土)、長崎ブリックホール大ホールにて、遠藤周作生誕100年記念「窪塚洋介トークショー&『沈黙 -サイレンス-』上映会」が開催されました。

冒頭では1977年に収録された遠藤先生の貴重な音声に耳を傾け、続けて映画『沈黙 -サイレンス-』の上映会へ。その後、劇中でキチジロー役を演じた窪塚洋介さんが登壇し、遠藤文学に対する想いや撮影の舞台裏について語りました。作品と真摯に向き合いながらも時折ユーモアを混じえる窪塚さんのお話に、会場は少しずつ和やかな雰囲気に包まれていきました。

 

遠藤先生が長崎の人たちに伝えたかったこと

NBC開局25周年記念講演会に招かれた遠藤周作。今回のイベントでは、当時収録されていた遠藤先生の「生の声」が特別に公開されました。「私は長崎のことがたいへん好きだから、心の底からみなさんにお願いしたい。いつまでも大事に、長崎のまちを想っていただきたい」と語りかける、柔らかくも力強いメッセージ。遠藤先生の言葉は、当時の会場にも、そしてこの日の会場にも、大きな宿題を残してくれているようでした。

 

神の存在と救いを問う、映画『沈黙 -サイレンス-』上映

(C)2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

2016年に公開された映画『沈黙 -サイレンス-』は、構想28年の時を経てマーティン・スコセッシ監督によって完全映画化された作品。キリシタン禁制の日本へ潜入したポルトガル人司祭ロドリゴが、残忍な拷問と悲惨な殉教の前に棄教を迫られる……そんな絶望の淵に立たされても尚「沈黙」を貫く神の存在と、人間にとって大切なものを問う物語です。スクリーンと向き合う一人ひとりの真剣な眼差しが、遠藤文学の壮大さを物語っているようでした。

 

窪塚洋介さんが感じた、遠藤文学の魅力

この日のために初めて登壇挨拶の原稿を作ってきたという窪塚さん。トークショーでは、冒頭から冗談を混じえながら会場を和ませる一方で「遠藤先生の洞察力、正直さ、そして人間の本質を残酷なまでに抉(えぐ)るさまに心を打たれた」と率直な気持ちを打ち明ける場面もありました。

『海と毒薬』や『深い河』の一節にふれるなど、『沈黙』以外の作品を引き合いに出しながら「驚愕する表現を目にするたびに思わず立ち止まってしまって、自分の中で想いをめぐらせてしまう」と遠藤文学への愛を語る窪塚さん。丁寧に語りかける言葉の中に、来場者の皆様も共感される部分があったのではないでしょうか。

 

映画『沈黙 -サイレンス-』と、キチジローへの想い

その後、話題は映画『沈黙 -サイレンス-』の舞台裏へ。日本人への敬意が随所に感じられるマーティン・スコセッシ監督の立ち振る舞いや、「ロドリゴとキチジローは2人で1人の主人公だ」という言葉。さらに「遠藤先生が残した『キチジローは私なんです』という言葉が、どれほどの支えになったか」と、感慨深く当時を振り返った窪塚さん。

キリスト教への信仰心を抱く一方で、命への渇望ゆえの弱さや狡さを併せ持つキチジローを無様に体現できるか。人間らしいからこそ難しいと感じられた配役も、「真摯に寄り添ってやり遂げられた」と充実感を滲ませました。

 

難役を演じきった撮影の舞台裏と、“許す”ことへの答え

トークの終盤には、来場者からの質問に答えた窪塚さん。主演のアンドリュー・ガーフィールドとの関係性について「彼は寝ても覚めてもロドリゴを演じていて、キチジロー役の僕を腹立たしく思うくらいに本気だった。“飢え”や“苦しみ”を体現するために食事制限もしていましたし、互いに熱くなってスタッフさんになだめられることもありましたね」と撮影当時のエピソードを振り返りました。

また、結婚を機に洗礼を受けた女性から「“許す”ために心がけていること」を問われた際には、「ハッピーなことにはすぐ反応していいけれど、ネガティブな気持ちを抱いたときは一度立ち止まってみる。話している相手や自分自身と“向き合う”ことが大切だと言われてきたけれど、僕は隣り合って話す方がいいなと思う」と答えた窪塚さん。ご自身の言葉を体現されるように、質問に対して寄り添う姿がとても印象的でした。

 

生誕100年の節目を彩るイベントに幕

トークショーの後には、鈴木史朗市長から窪塚さんへ花束と記念品の贈呈が行われました。前日に遠藤周作文学館を訪れたという窪塚さんは「以前訪れたときにはなかった『思索空間アンシャンテ』もとても魅力的だった。生誕100年に合わせて行われている企画展にも、ぜひ足を運んでほしい」と来場者の皆様へ呼びかけ、最後は会場全体に響く大きな拍手が送られました。

 

会場で販売した生誕100年記念グッズは、遠藤周作文学館にて引き続き販売いたします